法事の後の宴席。お葬式の場合は火葬場から戻って行われる初七日の後に精進落としとして会食が設けられることが多いようです。ご遺族にすればこれまでの葬儀の緊張感から少しだけ開放されホッとしたような気分になりますし、参列された方々もおそらく同じお気持ちでしょう。
宴の主役はもちろん故人でありますが、主賓の席には葬儀の一切を仕切っていただいた僧侶と世話役の方、続いて故人の友人や会社関係の方が着席します。そして喪主の挨拶の後、献杯の合図で会食が始まりますがその音頭をとる人は突然指名を受ける場合も多く、ひょっとしたらと思う方は心の準備をしておく必要があります。
ですが法事の際の献杯の挨拶と言われても、あらかじめ話の内容を準備をしておかないとなかな急に思いつくものではありません。そこで今回は急な指名に慌てないためにも、法事の際に献杯の挨拶をするときの注意すべきポイントを文例を交えながらご紹介します。
法事の挨拶!献杯の音頭を
とるときの5つの注意点
法事の席で突然献杯の挨拶を頼むとすれば、故人の部下や友人などお願いしやすい立場の人が指名されるのは当然に成り行き。まずは、法要が終わって会食までの簡単な流れと、友人代表の献杯の挨拶の文例をご紹介します。
法要終了から会食までの流れ
まずは故人の位牌にお酒を捧げます。次に会食の開始を告げる遺族代表の挨拶。司会者または遺族による献杯の音頭をとる方の紹介に続き、献杯の挨拶が始まります。挨拶の最後は「献杯」の発声で締めくくり、出席者全員で「献杯」の唱和をして合掌(黙とう)。その後会食が始まります。
〜文例〜
「故人の学生時代からの友人で○○と申します。○○さんとは今度一緒に釣りに行こうと話をしておりましたのに残念でなりません。きょうはこれから故人を囲んで酒を酌み交わし、思い出話に浸りながらご冥福をお祈りしたいと思います。○○さん、どうか安らかにお眠りください。それでは献杯させていただきます。献杯。」
法事の際の献杯の挨拶は要点をおさえて長すぎないよう注意する
献杯の挨拶が終わるまで、食事もお飲み物もおあずけなのは当然ですが、会食にご出席のみなさんは杯を片手に待っておられますので、長々と話をするのは良くありません。簡単な自己紹介と故人とのエピソード、最後にお悔やみの言葉を添えて長くても一分ぐらいでまとめるのがべストです。
間違っても乾杯の音頭と勘違いしてはいけません
せっかく献杯の挨拶はうまくいったのに、最後に感極まり「けんぱーい!」なんて元気のいい声を出したらぶち壊しです。法事の席での献杯の挨拶は、あくまでも故人に敬意を表し杯を捧げる意。ですから静かに「献杯」と発声してください。ちなみに杯を上に大きく持ち上げたり、カチンと合わせるのもマナー違反です。
法事の最中や献杯の挨拶で使ってはいけない言葉
献杯の挨拶に限らず法事の時に使ったらいけない言葉があります。まずは常識的なところで、「死ぬ」「死亡」「生きているとき」などの直接的な表現です。「死ぬ」は「ご逝去」、「生きているとき」は「ご生前」と言い換えるようにしてください。次は忌み言葉ですが、「重ね重ね」「返す返すも」「益々」「しばしば」などの重ね言葉です。
普段なら普通に使う言葉ですが不幸が重なるという意味でNG。法事の最中の会話で思わず出るのはある程度しかたがありませんが、法事の際の弔事や献杯の挨拶の時などは特に注意が必要です。
ご参考までに、仏式の葬儀の忌み言葉は「浮かばれない」「まよう」。神式、キリスト教の葬儀の忌み言葉は「成仏してください」「供養」「冥福」「往生」などです。また同じ仏教でも浄土真宗では「冥福」や「霊前」という言葉は使いません。
喪主や親族が献杯の挨拶をする場合
四十九日や一周忌などの法事の場合、参列するのは身内だけの場合が多く、法要の後の会食についても、献杯の挨拶を喪主や親族の代表が勤めるのが通例です。ここでは、親族よる献杯の挨拶をご紹介しておきましょう。尚、身内だけの場合は自己紹介を省いてもかまいません。
〜文例〜
「故人の弟○○でございます。本日はお集まりいただきありがとうございました。おかげさまで一周忌の法要を終えることができました。兄も久しぶりに皆様とお会いできて喜んでいると思います。心ばかりの粗宴ですが、杯を傾けていただき兄の思い出話でもお聞かせいただければと思っています。それでは献杯させていただきます。献杯。」
さて、人の前で挨拶するのが得意な方でも、法事の際の献杯の挨拶のように短い時間で自分の気持ちをうまく伝えるのは難しいものです。しかもそれがまったくのアドリブとなると、長すぎてはいけないということの他にも、重ね言葉など法事の席で使ってはいけない言葉や献杯の発声にもマナーがあり、無難にこなすのはなおさら大変です。
ですから、法事やお葬式に参列される場合は、そんな事態を想定して挨拶する内容をあらかじめ考えておいたほうがよさそうですね。
挨拶の内容はこれまでご紹介しましたように、簡単な自己紹介と故人とのエピソードやお悔やみの言葉、そして最後に献杯の音頭と要領を掴めば内容自体はそんなに難しくはありません。もしも献杯の指名を受けたら慌てず騒がず、参列者全員の心に響くようなすばらしい献杯の音頭をとってくださいね。
まとめ
法事の際の挨拶で献杯の音頭を取るときの注意点をご紹介します
・まずは法要終了から法事の挨拶、献杯までの流れを把握しましょう
・献杯の挨拶は要点をおさえて長すぎないよう注意しましょう
・間違っても乾杯の音頭と勘違いしてはいけません
・法事の際の献杯の挨拶で使ってはいけない言葉があります
・献杯の挨拶を喪主や親族の代表が勤めるのが通例