【地方別】お彼岸の準備と迎え方


春分の日や秋分の日の前後3日間を指す「お彼岸」ですが、どんな由来で、何を行う日なのかを知らない人も少なくありませんよね。ただ、お墓参りをしておはぎを食べて終了、という認識しかない人もいるのではないでしょうか。

でも、これから先、あなたが大切な人の供養を行う立場になった時や、結婚した先の家が宗教行事に熱心だった場合などを考えると、今からお彼岸の意味を知っておくことは無駄ではありませんよね。冠婚葬祭のマナーは、どれも知っていて損はないものばかりです。

また、お盆、正月など、日本の年中行事には地方別の特色があることが多いものですが、お彼岸も例外ではありません。お彼岸の中日である春分、秋分の日は全国共通の祝日ですが、全国的に同じ風習とは限らないのです。

そこで今回は、お彼岸の準備や、地方別の風習などについてお伝えします。

 

【地方別】
お彼岸の準備と迎え方

 

お彼岸の由来

「彼岸」とは、仏教の言葉で「向こう岸」、つまりあの世や極楽浄土を指します。お彼岸の中日である春分、秋分の日は、昼夜の長さが同じになることから、あの世とこの世が最も近づくと考えられ、この日に先祖供養のための行事を行うようになったと言われています。

ちなみに、仏教を信仰する国は日本以外にもたくさんありますが、お彼岸が存在するのは日本だけだという説があります。実は、日本では仏教の伝来以前から先祖供養を大切にする風習があり、その思想に合った行事として、お彼岸が定着していったのだとか。

 

全国共通の準備、迎え方

お彼岸の準備として全国的に定着しているものと言えば、彼岸会と呼ばれるお寺での法要やお墓参り、お仏壇へのお参りです。その準備として必要なのは、お墓の掃除や草むしり、お仏壇や仏具の掃除などですね。

また、お彼岸当日に仏前にお供えするための供花、お菓子や果物、そしてお供え膳を用意します。お供え膳は精進料理を仏膳に盛り付け、お彼岸の間仏さまに供します。丁寧にしたい場合は、中日以外は一汁二菜のお膳を用意し、中日は一汁三菜を用意するのがベストですが、毎日用意するのが難しい場合は、一日だけ(できれば中日のみ)一汁三菜を用意する方法でもご先祖様への思いは伝わるでしょう。

お彼岸に欠かせないものとして「ぼたもち」「おはぎ」がありますが、これは春彼岸は牡丹に見立てて「ぼたもち」、秋彼岸は萩の花を見立てて「おはぎ」と呼びます。

 

沖縄地方のお彼岸とは

日本全国の中で、特に変わったお彼岸の風習を持つ地域として、沖縄地方があります。沖縄ではお墓参りを行わず、ヒヌカン(火の神様)やトートーメー(お仏壇)にお供え物をして、家族の健康や安全などをお祈りする日とされています。

お供え物はお花や果物、お餅などのほか、「ウチカビ」と呼ばれるお金を模した紙を燃やします。このウチカビは、あの世でお金となるものだと考えられており、この風習は全国でも沖縄にしか見られません。沖縄に近い中国や台湾の影響だという説もあります。

 

九州地方で行う「彼岸籠り」

沖縄よりも少し北の方、九州地方には「彼岸籠り」と呼ばれる風習があります。お彼岸の時期に山に籠ったり、集落の神社に集まり、お酒を酌み交わすというものです。「お彼岸」と言えば仏教行事という認識が強いですが、神社で行うというのが大変興味深いですね。

神社で行う彼岸籠りには五穀豊穣を願うという意味が込められており、仏教的な考えとはまた異なった目的があります。限られた地域でのみ行われている風習のため、どのような由来で彼岸籠りを行うようになったかは定かではありません。が、由来も忘れてしまうくらい昔から行われている大切な行事ということは確かですね。

 

広島県熊野町では「筆まつり」が行われる

高品質の筆の産地である広島県熊野町では、秋のお彼岸に合わせて「筆まつり」が行われます。メインとなるのは大きな筆で書かれる「大作席書」や筆供養などですが、彼岸ということで「彼岸船」という大きな船が町内を練り歩く催しもあります。

彼岸船を引く風習は80年ほど前から行われているそうで、その由来は仏教の彼岸船であるとか、神道におけるご神体の渡御から広まったなどという説もありますが、一番信憑性が高いのは宮島に伝わる「八朔たのも船」から来ているという説だと言われています。

 

 

いかがでしたか。基本的なお彼岸の知識と、地方でしか見られないお彼岸の風習などについてご説明しました。「お彼岸」と言えば、お墓やお仏壇、お寺に深く関わりがある行事と思われがちですが、地域によってはそれだけではない特別な日だということがわかりましたね。

何事も合理的にする傾向があるこのご時世でも、昔ながらの方法でご先祖様を供養し続けることは、故人のことを思い、自らの心の安定を図るためにも大切です。お彼岸はお盆や正月と比較すると「忙しい」「面倒だ」だけで省略されがちな行事ですが、季節感のある味わい深いイベントでもあります。

この機会に、時間をかけて準備をして、心穏やかにお彼岸を迎えてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

お彼岸の準備と迎え方、地方にしかない珍しい風習は

・お彼岸は、あの世とこの世が近付く日に行う先祖供養
・全国共通の準備、迎え方は、お墓やお仏壇の掃除、お供え物の用意
・沖縄地方のお彼岸の特徴は、墓参りは行わずおお仏壇に祈りを捧げ、ウチカビを燃やす
・九州地方で行われる「彼岸籠り」は、神社などで五穀豊穣を願う行事
・広島県熊野町では「筆まつり」の中で彼岸船の引き回しがある


連記事