お布施を渡すことも、喪主にとっては葬儀の一連のなかで大切なお仕事。一連の葬儀の他にも、納骨や四十七日、その後も法事法要と、お寺や僧侶の皆様とは深い関わりとなります。
とは言えお布施は本来仏教の修行のひとつとも言われ、その相場などが明瞭でない点で、初めて喪主を勤める人々が頭を悩ませる場面もしばしば。先祖の代々墓があるなど、菩提寺としているお寺の場合には、葬儀社のスタッフだけに頼る訳にもいかないこともあります。
もしも直接、僧侶へお布施の目安を伺いたい時には、「皆様どれくらいされていますか?」など、相手もはっきりと伝えにくいことを考慮の上、少しぼかした表現でお伺いする方法があります。
このように、お葬式の場面だけに繊細なお布施のマナー、渡し方や渡すタイミングなど、基本的におさえておきたい7つの点を解説します。
お布施について
喪主が知っておくべき7つの事
お布施の基礎知識
以前、某企業がお布施の料金表を発表したことがあります。その時、賛否両論が巻き起こり、結局この企業はHPからお布施の料金表を削除しました。
お布施の料金表があれば、喪主としては悩みがひとつ減りますから、助かるとも思えますが、それではなぜお布施の料金表を出すことが問題視されたのでしょうか。
【 本来のお布施の意味合い 】
・ 現代でこそ、お布施は戒名や読経のお礼とされていますが、本来は仏教の修行である「六波羅蜜(ろくはらみつ)」のひとつなのです。
【 仏教の6つの修行:六波羅蜜(ろくはらみつ)】
・ 布施(ふせ) …
衣服や金銭を寄付して、「もったいない」や「惜しむ」心をなくす修行。・ 持戒(じかい) … 常に自分と向き合い、省みて戒律を守る修行。
・ 忍辱(にんにく) … 痛み苦しみに耐え忍ぶ修行。
・ 精進(しょうじん) … 日々努力を惜しまない修行。
・ 禅定(ぜんじょう) … 常に穏やかな心を保ち自己を見つめる修行。
・ 智慧(ちえ) … 常に真実を見つめ、正しく物事を判断する修行。
この6つの修行のひとつがお布施です。このように自分自身に対する修行の意味合いがあるために、お布施に一定の料金を定めることは、避けられているのです。
葬儀社に確認したいお布施の話
とは言え、葬儀を執り行う喪主としては、葬儀を含めた全体の予算は気になるところではないでしょうか。
■ 一般的に葬儀代金の他に、別途お布施を準備する必要があります。
ただし、今まではそれなりの予算が発生する、一般葬でのお葬式がほとんどで、さほど気にならなかった側面でもありました。
最近では予算をコンパクトに納めた家族葬や一日葬など、多種多様なスタイルになりつつあるため、少しずつ様相も変わってきています。
■ 家族葬など、小さな規模のお葬式を執り行う葬儀社では、お布施代金も含めたプランを出す葬儀社も、見受けられるようになりました。
・ 全国エリアでは、「小さなお葬式」などがあります。
お布施を包む金額の目安
お布施を包む金額の目安は、一概に決められない、と言うのが正直なところです。お布施の金額には、地域性の他にも、お願いするお寺との関係性なども影響してくるからです。
【 お布施を包む金額の目安 】
■ 関東地方では35万円、関西地方では20万円が目安とされています。
ただしお願いするお寺が、先祖代々墓がある菩提寺であるなど、関係性によってお包みする金額は大きく変わります。
また、先ほどの項目で述べた小さい規模の家族葬などのお葬式で、葬儀社がお布施代金も含めている場合、プランや葬儀社によっては2万円~3万円などの料金のお布施もあります。
けれどもその場合にも、葬儀社がお寺を提供しているケースがほとんどです。そのため自身の菩提寺があるならば、別途用意するプランが多くなります。まず菩提寺に相談をして、あらぬトラブルは避けるように配慮します。
お布施の準備、基本マナー
お布施は他のお香典などと同じように、基本マナーに則って包み、表書きなどを書かなければなりません。半紙を使って包む方法がありますが、現代ではそこまでしなくても問題ありません。
【 お布施の封筒(不祝儀袋)】
・ 白い封筒を用意すれば充分です。
白い封筒は「再び重なる」ことがないように、二重ではなく一重のものを用意します。
表書きは宗教・宗派によって変わります。ご自身の宗教(お願いするお寺の宗教・宗派)に沿って準備してください。
【 お布施の封筒の書き方 】
・ 表面の上段には表書き、下段には喪主の氏名を記します。
・ 裏面には、喪主の住所と電話番号を記します。
(ただし住所と電話番号は、お寺との関係性が初めての場合です。)
以上がお布施の準備です。なかには喪主個人ではなく、家でお布施を用意するケースもあります。その場合には表面に「○○家」と記し、裏面に喪主の氏名を明記します。
宗派によって違う表書き
お布施に限らずお葬式の場面では、それぞれの宗教・宗派によってマナーが少しずつ違います。お布施の準備の場合には、その表書きが変わるので、今一度確認してから用意をしてください。
【 宗教・宗派によって違う、お布施の表書き 】
■ 仏式
・お布施・御礼・御回向料(ごえこうりょう)・読経料 など
■ キリスト教式
・献金・御礼 など
■ 神式
・御祭祀料(おんさいしりょう)・御礼・御榊料(おんさかきりょう)など
迷った時には「御礼」と記すと良いでしょう。また、お葬式に参列した時に差し上げるお香典と混同してしまう人がいますが、お布施の表書きの文字は、黒い墨で書いてください。薄墨では書きません。
お布施を渡す時のタイミング
喪主が僧侶へお布施を渡す時は、葬儀社が入っている場合には、葬儀社のスタッフが案内をしてくれるケースが多いです。基本マナーとしては、葬儀(読経)が行われる前に、控え室でお渡しします。
【 お布施を渡す時のタイミング 】
■ 僧侶が控え室に着いたら、葬儀社の方が案内をしてくれます。
菩提寺である場合には、自分でお伺いしても大丈夫ですが、その場合でも葬儀社が入っていれば、調整をしてくれるケースがほとんどです。
とは言え、喪主は参列者の対応などで何かと忙しくなります。事前に挨拶とともにお布施をお渡しするのが基本マナーですが、そうも行かないことも多々あります。
■ 忙しく挨拶が出来なかった場合は、葬儀が終わってからで渡すことも。
お布施を渡す時の基本マナー
お布施を渡す時も、他の様々な次項と同じく基本的なマナーがあります。
【 お布施の渡し方 】
■ お盆に乗せてお布施を渡す
直接の手渡しではなく、お盆に乗せて僧侶へ渡します。この、お布施を渡す時のお盆は、切手盆(きってぼん)と呼ばれる専用のものがあります。
ただお通夜など急な場面では、専用の切手盆を持ち合わせていないこともあります。多くの事例で、葬儀社に相談をすれば用意してくれます。本来はお布施を渡す意味合いではなく、挨拶でお伺いするので、必ず挨拶をしてから、お布施を渡します。
喪主が僧侶へお布施を渡す時におさえておくべき、7つの基本マナーはいかがでしたでしょうか。喪主と言う立場になって初めて、何かと気に掛かるマナーはたくさんあります。
お布施を渡す時、葬儀前の僧侶への挨拶は、「本日は○○(故人)のためにお越しいただき、ありがとうございます。お勤め宜しくお願いいたします。」など、簡単で良いので挨拶をしてください。
また、最後にお伝えした切手盆(きってぼん)ですが、本来はこの切手盆に乗せて渡す方法が一番丁寧ではあるものの、お通夜などでは用意できない場面もあります。そのような時には、通常お葬式に参列する時と同じく、袱紗(ふくさ)で対応しても大丈夫です。
充分に準備をしたつもりでも、慌しいのがお葬式です。その時々で思わぬ事や迷うことがあるかもしれませんが、周囲の人々や葬儀社のスタッフに相談し、納得の行くお葬式を執り行ってください。
まとめ
お布施について、喪主が知っておくべき7つの事
・お布施は本来料金ではなく、仏教の6つの修行のひとつ
・葬儀費用とお布施は別物。家族葬では葬儀社に確認を
・お寺との関係性や地域で違うお布施の目安。関東では35万円
・お布施は一重の白い封筒に用意。表書きと下段に氏名を
・表書きはお寺(故人)の宗教や宗派によって書き方が変わる
・お布施を渡すのは葬儀前。控え室で挨拶を兼ねてお渡しする
・直接ではなく切手盆(きってぼん)にお布施を乗せて