焼香マナーは仏式の葬儀に参列する際、最も心配なところですよね。喪主やご遺族を含め、多くの方々の前で行うだけに、しっかりと焼香マナーは押えたいもの。
ただ、実は家の仏壇で「お線香を上げる」のも焼香の形のひとつですが、線香ではなく抹香(香木を細かく砕いて作ったお香)は、このような席でないとほぼお目にかかれないため、「焼香のマナーをよく知らない。」という方も多いのも事実です。
「前の人の作法を真似れば何とかなる。」と言ってしまえばそれまでですが、思ったよりも早く焼香の順番が回ってきたら、焦ってしまうでしょうし、「故人の冥福を心から祈る」余裕もなく焼香が終わってしまう、ということにもなりがち。
そう考えると、予め「焼香のマナーの基本」は頭の片隅にでも留めておいた方が、安心して参列できますよね。
そこで今回は、通夜や葬儀の参列前に理解しておきたい、基本の焼香のマナーを7つの項目に分けて、お伝えします。
焼香マナー☆
参列前に理解しておきたい7つの基本
焼香は主に「自分を清めるため」
焼香に対しては何となく、故人を供養するために行うイメージがあります。もちろんその意味もありますが、実は香を焚くことで、自らの心身を清め祈りを捧げる意味合いが強いのです。
【 焼香マナーの基本:身を清める 】
■ 香りには実は、「清める」などの宗教的意味合いもあり、仏教に限らず様々な宗教で「香を焚いて空間を清める」ことは、太古から行われているもの。
・ それを思うと、焼香のマナーを守り「自らを清める」ことの大切さが理解できます。
抹香を「押し戴く」意味
通夜や葬儀で焼香をする時は、抹香をつまんで額に持って行き、その後香炉に落としますが、この一連の動作を「押し戴く」と呼びます。
「押し戴く」とはそもそも「物をうやうやしく前面の上方に捧げ持つ」と言う意味合い。つまり心身を清める抹香は、押し戴くという動作に値する貴重なもの、と言うことになります。
それでは基本的な焼香の作法をお伝えします。
【 焼香マナーの基本:焼香の作法 】
①霊前に進み出て深く一礼し、合掌する。
②右手の中指・人差し指・親指の3本で抹香をつまむ。
③右手に左手を添えて、額に抹香を押し戴いたあと、その抹香を指先で撒くようにして静かに香炉に入れる。
④一回目のお焼香を補うように、二回目のお焼香を行う。この時は額に押し戴かず、そのまま香炉に入れて良い。
⑤再び霊前に向けて合掌する
なお宗派により抹香を押し戴かない、という焼香のマナーもありますが、このことに関しては後述します。
数珠は丁寧な印象を与える
数珠は、そもそも念仏などをあげた回数を数えるための「仏具」ですので、仏教徒以外は持たなくてもよいとされます。しかし仏式での通夜や葬儀が非常に多い日本では、持っていた方が周囲に丁寧な印象を与えます。
また、「故人や仏さまに敬意を表すために持つもの」という考え方もあるため、仏教徒ではなくてもできれば一本揃えておくことをおすすめします。数珠を持っている時のお焼香のマナーは、以下のようになります。
【 焼香マナーの基本:数珠の扱い 】
・数珠は左手首にかけておくか、左手の親指と人差し指の間に軽く挟んで持つ。
・もしも数珠が長ければ二重にして持つ。
・霊前に進み出て合掌する際には、数珠を持った左手に右手を合わせるか、数珠を両手にかけるようにする。
・焼香の際には、左手を身体の前に差し出しておき、右手で焼香を行う。
宗派によって違う、焼香マナー
仏教には各宗派がありますが、実は焼香のマナーも各宗派によって異なります。例えば浄土真宗等では、抹香を押し戴く動作をしません。また焼香の回数も1回や3回などまちまちなのです。
こんな時は故人の宗派に従うべきか、あるいは自分の家の宗派に従うべきか迷ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
【 焼香マナーの基本:どの宗派にそうべきか 】
■ 基本的には自分の家の宗派の焼香のマナーに沿って行います。
・ しかし「家の宗派って何だろう?」と言う方や、「自分も、故人の宗派もわからない!」という場合には、前述した、基本的な焼香の作法で焼香を行えばOKです。
要は、焼香のマナーにとらわれるよりも、心を込めて祈ることが大切なのです。なお、参列者が多い時はあらかじめ「焼香は一回でお願いします」とのアナウンスが行われることがありますので、その場合は指示に従って焼香を行います。
「立礼焼香」の作法
通夜や葬儀の会場は斎場だったり故人の自宅だったりと、ケースにより様々です。
焼香も、会場が「椅子席」の場合に用いられる「立礼焼香」、会場が「畳敷き」の場合に用いられる「座例焼香」、式場が狭かったり参列者が多い時に用いられる「回し焼香」など、状況によって最も参列者が焼香しやすい方法がとられます。
まずは「立礼焼香」についてお話を進めます。立礼焼香では、喪主や遺族の焼香に続き、参列者が順に焼香を行います。基本的な焼香の作法は以下のようになります。
【 焼香マナーの基本:立礼焼香 】
①隣の方に軽く会釈をし、焼香台に向かう。
②祭壇に進んで、遺族に一礼する。その後遺影に向かって深く一礼し、合掌する。
③抹香を右手でつまみ、額に押し戴いたあと静かに香炉に入れる。
④遺影に向かって合掌する。
⑤一歩下がって再び遺影に一礼した後、遺族に会釈をしてその場を退く。
「座礼焼香」の作法
座礼焼香では、移動の際に「まっすぐ立ち上がらない」よう常に腰を落として移動するのが焼香のマナーです。基本的な焼香の作法は以下のようになります。
【 焼香マナーの基本:座礼焼香 】
①隣の方に軽く会釈をし、中腰の状態で祭壇に向かう。
②遺族に対して、正座をしてから一礼する。
③祭壇席に向きなおして、遺影に一礼し、その後膝でにじり歩くように移動し、焼香席の座布団の上に正座する。
④遺影に合掌し、抹香を右手でつまみ、額に押し戴いたあと静かに香炉に入れる。
⑤再び遺影に合掌し、祭壇に身体を向けたまま焼香席から「後ずさり」をし、遺影に対して一礼する。
⑥遺族に対して一礼をし、中腰の状態で席に戻る。
「回し焼香」の作法
回し焼香では、参列者は移動せず、香炉を順に回しお焼香を行います。基本的なお焼香のやり方は以下のようになります。
【 焼香マナーの基本:回し焼香 】
①自分のところに香炉が回ってきたら、回してくれた方に会釈をし、受け取る。
②香炉を自分の前に置く。もしスペースがなければ自分の膝の上に置き、遺影の方向に向かって一礼・合掌する。
③抹香をつまんで額に押し戴いたあと静かに香炉に入れる。
④再び遺影の方向に向かって合掌し、香炉を次の方に回す。
焼香のマナーの7つの基本のお話はいかがでしたでしょうか。無宗教と言われる日本ですが葬儀の多くは仏式に則っているものが多いため、仏式の葬儀マナー、特に焼香マナーは、一度確認しておくと安心です。
余談ですがタレントのオスマン・サンコンさんがはじめて日本の葬儀に参列した時、参列者の焼香の作法が抹香を食べているように見えてしまい、順番が来た時につい口に入れてしまった、という有名なお話があります。
故郷にこのような習慣が全くないであろう、サンコンさんならではのエピソードと言えるかもしれませんが、日本人でも焼香の作法の意味を全く知らなければ、口に入れないまでも「どうすればいいの?」と慌ててしまうはず。
何事も作法やマナーを知っていれば、その分慌てずに済み、心の余裕も持てるというものです。冒頭でも述べましたが、通夜や葬儀は故人とのお別れの場。焼香のマナーを頭の片隅に留め、心をこめて故人に感謝と哀悼の意を表してください。
まとめ
基本の焼香マナーとは
・焼香は「自らを清めるためのもの」と心得る
・抹香を「押し戴く」意味を理解する
・仏教徒ではなくても、数珠は用意しておく
・焼香マナーは宗派によっても違いがある
・立って行う焼香が「立礼焼香」
・畳間などで、座って行う焼香が「座礼焼香」
・狭い会場などで、焼香台が回ってくるのが「回し焼香」