お布施の準備や渡し方は、喪主になった方々にとっては、必要不可欠なマナーです。仏教の修行のひとつでもある、と言われているお布施は、葬儀の場面だけではなく、納骨法要や四十九日法要、一周忌や三回忌と、その後もずっと続く慣わしでもあります。
喪主になられた方々にとって、今後お世話になるお寺との関係性は、故人を偲ぶ際にもとても重要なものとなります。ぜひお布施の基本的なマナーと基礎知識を理解して、今後の良い関係性を作ってください。
本記事では基本的なお布施の準備や渡し方、渡す時のタイミングなどを、葬儀や法要の流れに沿ってお伝えします。本記事を通して、ぜひお寺やお坊様、葬儀社との良い関係性を築き、心安らかに故人を送れるお葬式にしてください。
お布施を出すタイミング。
喪主が覚えるべき7つのマナー
葬儀の時にお布施を出すタイミング
喪主を勤める場合には、読経や戒名をして頂くお寺様へ、お布施を渡すことがしきたりです。基本的にお布施は「仏教の修行」のひとつであり、渡す人間の気持ちを表したものではありますが、一般的には読経や戒名のお礼として扱われているのが現状です。
【 喪主がお坊様へお布施を渡すタイミング 】
・ 葬儀の前にお坊様が到着した時、控え室にご挨拶に伺います。その挨拶の時にお布施を一緒にお渡しするのが好ましいです。
ただし、葬儀の日は喪主自身も何かと慌しく、時にはご挨拶に行きそびれてしまう事があります。そんな時には、慌てずに葬儀が終わってからご挨拶をし、お布施を渡しても、問題はありません。
喪主とお寺と葬儀社、その関係性
多くの喪主の方々が、葬儀社に依頼をしてお葬式を挙げます。そのためお寺(お坊様)と喪主の間を、葬儀社が取り持ってくださるケースは多いです。
【 菩提寺で葬儀を執り行う場合 】
・ ご自身の菩提寺で葬儀を執り行う場合でも、お坊様が会場へ到着された際に、葬儀社が控え室へ案内しますが、喪主や故人と菩提寺との関係性が深い場合には、葬儀社を通さずに、喪主ご自身で挨拶に行くことがあります。
ちなみに「菩提寺」とは先祖の代々墓があるお寺を指しています。通常は菩提寺でも喪主や故人との関係が薄い場合があるため、葬儀社が取り持つことが多くなるのです。
法要時にお布施を出すタイミング
お布施は葬儀だけではなく、その後の法事や法要でもお渡しすることになります。その場合には、お寺の受付でお渡しする場合が多くなります。
【 葬儀後の、お布施が必要な法事や法要 】
・納骨法要… 現在では火葬当日にそのまま納骨の流れが多いです。
・四十九日法要… お布施の他に、お食事(お斎)は必ずご招待します。お坊様へのお車代と、お食事(お斎)を共にしない場合(ご辞退を受けた場合)のお膳料を忘れずに用意します。
・一周忌や三回忌など
この三点が主な法事や法要ですが、その他にも家によってはお盆やお彼岸に読経などをお願いすることがあります。その他にも、お墓の改葬などでも、お布施をお渡しする必要があります。
お布施の準備
お坊様にお渡しするお布施ですから、しっかりとしたマナーに則った包み方で、お布施の準備をしなければなりません。昔ながらの方法では半紙(奉書紙)に包みますが、現代では白い封筒に包む方法が主流です。
また二重の不幸を避けるため、二重の封筒は避けます。必ず一重の封筒を準備してください。
【 お布施の包み方 】
① 郵便番号のマス目など、何も印刷されていない真っ白な封筒を用意します。
② お札の人物(福沢諭吉など。)が蓋側にくるようにお布施を入れます。
③ 表書きをします。
多くの喪主の方々が悩むことですが、基本的にお布施には水引を付けません。ただし、確かに地域によっては水引を付ける風習を持つ場合もあります。
お布施の表書きの注意点
お布施の準備で最も気になるのが、表書きのマナーです。
【 お布施の表書きマナー 】
・ まず、押さえなければならないマナーは、お布施の場合には表書きは、薄墨ではなく黒墨を使うことです。
① 表上段には、「お布施」もしくは「御布施」と書きます。
② 表下段には、喪主の名前もしくは「○○家」と書きます。
③ 中封筒には、金額を書きます。金額の数字は旧漢字で書きます。
【 旧漢字表 】
・ 一から十までを、旧漢字でお伝えしますので、コチラを参考にして下さい。
壱、弐、参、四、伍、六、七、八、九、拾、…
・ 「百、千、万、円」にも旧漢字が用いられます。
佰、阡、萬、圓、…
数字の中には常用漢字のものもありますので、比較的覚えやすいです。
お布施を包む袱紗(ふくさ)のマナー
お布施をお坊様へお渡しする際には、切手盆が準備できればそれが一番です。喪主の方が個人で持っている事例は少ないのですが、通常では葬儀社が用意してくれます。
ただし時には袱紗(ふくさ)でお渡しするケースもあります。どちらにしろ、準備をしたお布施は袱紗(ふくさ)に包んでご挨拶まで持っておくと良いのですが、袱紗(ふくさ)には包み方にもマナーがあることを、押さえておく必要があります。
【 お布施の袱紗(ふくさ)の包み方 】
・ 袱紗(ふくさ)の包み方マナーにはいくつかあり、葬儀の際には「弔辞の包み方」をします。
① ひし型に広げた中央から、やや右よりに袱紗を置きます。
② 右側をお布施の封筒に沿って折りたたみます。
③ 続いて下から上へ、封筒に沿って折り進めます。
④ 最後に左側を折りたたみます。
袱紗(ふくさ)は結婚式でも用いられるため、様ざまな色目や最近では可愛い柄など、多くの種類が見受けられます。けれどもお布施には葬儀の場にふさわしい濃紺やグレー、紫といった、落ち着いたものを選んでください。
お布施を渡す際のマナー
会葬や結婚式などでは、袱紗(ふくさ)に包んでお渡ししますね。お布施も袱紗(ふくさ)でお渡しすることが基本と考えがちですが、実はお布施の場合には「切手盆」と呼ばれる小さなお盆があります。
お布施をお坊様へお渡しする場合には、前述したようにこの「切手盆」に乗せてお渡しするのがマナーです。ただし、切手盆がない場合には、袱紗を座布団にしてお布施を乗せてお渡ししても問題はありません。
■ 切手盆にお布施を乗せる際には、必ずお坊様へ向けて置きます。
このように黒い切手盆や袱紗(ふくさ)をお盆にしてお渡ししますが、ご自宅などでの葬儀では、時々小さいお盆にお布施を乗せてお渡しする場合もあります。大切なのは「手でお渡ししないこと。」です。
喪主となった時に押さえておきたい、お布施の渡し方やタイミングの基礎知識はいかがでしたでしょうか。今後も長くお世話になるお坊様にお渡しするお布施だけに、マナーはしっかりと把握して準備、お渡ししたいものです。
お布施の多くが葬儀料金に含まれていないため、お布施の金額に悩む喪主の方々も多いようです。お布施の金額を聞くことは難しく、お坊様にも伝え方次第では曖昧な返答しか頂けないかもしれません。
葬儀におけるお布施の範囲は15万円から50万円とその幅も広く、喪主としても最も悩む場面であることは確かです。そんな時には「皆様おいくらくらい包まれていますか?」など、遠まわしに伺うとお坊様も伝えやすくなります。また、葬儀社に相談してみるのも一案です。
正しいお布施の準備や渡し方のマナーを押さえて、お寺やお坊様と今後も良い関係性を築いてください。
まとめ
喪主がお布施を渡す時に押さえたい、準備の仕方とマナー
・葬儀でお布施を渡す時は、お坊様の到着時に控え室での挨拶で
・菩提寺で葬儀を執り行う場合にも、葬儀社が案内する場合が多い
・葬儀後の法事や法要では、お寺の受付時にお渡しするのが一般的
・お布施に一重の白い封筒を準備。水引は基本的には使いません
・表書きには「お布施」か「御布施」。中封筒の数字は旧漢字で
・袱紗(ふくさ)で御布施を包むなら、「弔事」の包み方を
・御布施は小さな切手盆の上に、お坊様へ向けて置くこと