喪主の挨拶は、通夜や葬儀など、様々な場面で行われます。大切な方を家族を亡くして、さらに喪主となったら、悲しみの中でもその役目を全うしなければなりません。
非常に忙しくなりますが、通夜や葬儀などの様々な儀式においては、喪主がその流れを把握し、様々なことを決め、遺族の中心となって行動していく必要があるのです。そのような中でも、喪主の挨拶は大変重要な位置を占めます。
人によっては、多くの人々の前で話すのは苦手という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、通夜や葬儀に来てくれる方は、皆故人と最後のお別れをするために集まってくれただけに、礼儀をもって、心を込めた感謝の気持ちを伝えたいですよね。
そこで今回は、弔いの儀式における様々な場面での喪主の挨拶、その構成についてお伝えします。それぞれ例文も載せますので、ご参考にしてください。
喪主の挨拶、それぞれの場面。
押さえるべき構成と例文集
通夜においての喪主の挨拶
「通夜」とは、そもそも故人との別れに集まった人々が遺体のもとで「故人との思い出」を語り合う夜のことを指していました。
今日では時間を区切って行われるセレモニー形式が一般的となり、告別式に参列できない弔問客が「故人との最後のお別れ」をするという場にもなっています。この時の喪主の挨拶の構成と、例文は以下のようになります。
【 通夜での喪主の挨拶 】
■ 挨拶の構成
① 弔問に対するお礼
② 故人の死因・死亡日時などの報告(詳しく話す必要はありません)
③ 故人が生前お世話になったことに対するお礼と、今後のおつきあいのお願い
④ 「通夜振る舞い」の案内
⑤ 葬儀・告別式の案内
≪ 例文 ≫
① 本日は、ご多忙のところ故○○○○のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げますとともに、ひとことご挨拶をさせていただきます。
② 父は一昨日の18時30分、心不全のため75歳で永眠いたしました。家族の見守る中、眠るように息をひきとりました。
③ 会社を定年退職した後は様々な趣味に打ち込んでおり、皆さまにも様々な面でお世話になりました。本日はこのようにたくさんの方にお越しいただき、父も心から喜んでいることと存じます。
今後とも、父の生前と変わらないご厚誼(こうぎ)とご鞭撻のほどを宜しくお願い申し上げます。
④ なお、この後ささやかではございますが、おもてなしの用意をいたしておりますので、どうぞご一緒にお召し上がりください。
⑤ また、葬儀・告別式は明日の午前11時より、こちらの斎場にて執り行います。何卒宜しくお願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。
「通夜振る舞い」、喪主の挨拶
「通夜振る舞い」とは、弔問客への感謝の気持ちを表すことと故人の供養のために、軽めの食事やお酒の席を設けることです。
あまり堅苦しくならないようにしたいものですが、宴会ではないので、あくまでもしめやかに故人の思い出を語り合う席であることを意識しておく必要があります。「通夜振る舞い」においての喪主の挨拶は、開会時と閉会時の2回となります。
【 開会時の挨拶の構成 】
① 弔問と通夜を滞りなく執り行えたことへのお礼
② 会食のおさそい
③ 故人を偲ぶとともに、寛いでいただくことを促す
≪ 例文 ≫① 本日は故○○○○のためにご弔問いただき、誠にありがとうございました。おかげさまで通夜式を無事執り行うことができました。
② 大変ささやかではございますが、このようなおもてなしのご用意をいたしました。十分なことはできませんがお召し上がりください。
③ 父の思い出話などを伺えれば幸いでございます。お時間の許す限り、どうぞごゆっくりお寛ぎください。
【 閉会時の挨拶の構成 】
① 弔問へのお礼をもう一度述べる
② 閉会まで共に時間を過ごしてくれたことへのお礼
③ 閉会(お開き)のお知らせ
④ 葬儀・告別式の案内
⑤ 帰路への気遣い
≪ 例文 ≫
① 皆さまのおかげを持ちまして、本日は無事父の通夜式をつとめることができました。
② 父も大変喜んでいることと存じます。最後まで父と共に過ごしていただき誠にありがとうございました。
③ もっと皆さまのお話を聞かせていただきたいのですが、夜も深まってまいりました。皆さまには明日のご予定もあるかと存じますので、本日はこのあたりでお開きとさせていただきます。
④ なお葬儀・告別式は、明日午前11時からこちらの斎場で執り行いますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
⑤ どなた様もどうぞお気をつけてお帰り下さい。本日は誠にありがとうございました。
「葬儀・告別式」の喪主の挨拶
「葬儀」と「告別式」がどのように違うかは、下記を参考にすると分かりやすいです。
【 葬儀と告別式の違い 】
■ 葬儀→
・ 親族や知人が故人を偲び、死者を葬る儀式。仏式における読経、キリスト教式における聖書の朗読、出棺、火葬などをさす。
■ 告別式→
・ 親族や知人が故人に対し「最後の別れ」を告げる儀式。仏式における焼香、キリスト教式における献花、神式における玉串奉奠などがこれにあたる。
といった違いがあります。しかし今ではこれらを一緒に執り行うのが一般的。「葬儀」という場合「告別式」も、そこに含まれるケースが多くなっています。
ここでの喪主の挨拶は、通夜に置いての喪主の挨拶とほぼ構成は同じです。時間としては1~2分程度とし、なるべく感情的にならないようわかりやすい口調で挨拶をします。
【 葬儀や告別式での、喪主の挨拶 】■ 挨拶の構成
① 弔問に対するお礼
② 自己紹介
③ 故人の死因・死亡日時などの報告
④ 故人の生き方や人柄の紹介
⑤ 故人が生前お世話になったことに対するお礼と、今後のおつきあいのお願い
≪ 例文 ≫
① 本日はお忙しいところを故○○○○のためにお集まりいただき、誠にありがとうございました。
② 私は故人の娘で△△と申します。喪主としてひとこと、皆さまにご挨拶申し上げます。
③ 父はかねてから療養中のところ、○月○日の18時30分に永眠いたしました。死因は心不全で、家族に見守られながら眠るように息をひきとりました。
④ 何事にも好奇心旺盛な父で、会社を定年退職した後は趣味のスポーツや写真撮影などに精を出しておりました。
結果多くの皆さまと知り合うことができ、晩年は病気のために動くことがままならなくなったものの、たくさんの方に囲まれて幸せな一生だったことと思います。
⑤ 生前皆さまにお世話になりましたことを、父に成り代わり御礼申し上げます。
また今後とも変わらぬご厚誼とご鞭撻のほどを宜しくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。
「初七日法要」の喪主の挨拶
「初七日法要」とは、故人が極楽浄土に行けるように皆で祈る「法要」です。本来は命日を含めて逝去後七日目に執り行う法要でしたが、短いスパンで再び遺族や知人が集まるのも困難が生じるということで、現在は葬儀の日に合わせて初七日法要も一緒に執り行うことがほとんどです。
葬儀・告別式を経て出棺と火葬が終了した後、遺族は祭壇に故人の遺骨と位牌を安置し「還骨法要」を執り行います。この還骨法要に続き、初七日法要を行う形となるのが一般的です。
この時にも法要の最後に喪主の挨拶がありますが「精進落とし」の席を初七日法要の後に設けている場合は、そのことも挨拶に盛り込むようにします。
【 初七日法要の、喪主の挨拶 】
■ 挨拶の構成
① 参列へのお礼
② 葬儀を執り行えたことに対してのお礼
③ 現在の心境と今後の決意
④ 「精進落とし」の案内
≪ 例文 ≫
① 本日はお忙しいところ、故○○○○の初七日にご参列いただき誠にありがとうございました。おかげさまで無事に法要を執り行うことができました。心より御礼申し上げます。
② また、葬儀も皆さまのおかげで無事に執り行うことができました。至らぬ点もあったことと存じますが、お世話になりましたこともあわせて御礼申し上げます。ありがとうございました。
③ 父の療養が比較的長かったため、私たちも少しずつ別れへの覚悟ができていたものの、こうして実際にいなくなってしまうと、まるで心に穴が空いたような心持ちがいたします。
まだ気持ちの整理がついていませんが、今家族で力を合わせ、父が安心できるように生きていきたいと思います。今後とも私たち家族をどうぞ宜しくお願い申し上げます。
④ なお、本日はささやかではございますが、おもてなしの用意をいたしております。お時間の許す限りごゆっくりお過ごしいただければきっと父も喜ぶと思います。
本日はご参列いただき、誠にありがとうございました。
「精進落とし」の喪主の挨拶
「精進落とし」は本来「忌明け(命日より四十九日後)」まで肉食などを控えてきたものを、この日を境に「通常の食事に戻す」という意味がありましたが、現在では初七日法要の後に「参列者の会食」として行う意味合いが強くなっています。
僧侶やお世話になった方へのお礼の席でもあります。ここでの喪主の挨拶は「通夜振る舞い」の開会時と閉会時同様に2回となります。挨拶の構成も「通夜振る舞い」に準じたものとなります。
【 開会時の挨拶の構成 】
① 一連の弔いの儀式を滞りなく執り行えたことへのお礼
② 会食のおさそい
③ 故人を偲ぶとともに、寛いでいただくことを促す
≪ 例文 ≫
① ひとことご挨拶を申し上げます。皆さま、本日は誠にありがとうございました。おかげさまで故○○○○の葬儀及び初七日法要を滞りなく終えることができました。改めまして心より御礼申し上げます。
② 大変長い時間をお付き合いいただき、皆さまさぞかしお疲れのことと存じます。大変ささやかではございますが、皆さまへの慰労と感謝の意味を込めて食事の席を用意いたしました。
③ 思い出話などをお聞かせいただきながら、ごゆっくりお召し上がりいただければと存じます。本日は誠にありがとうございました。
【 閉会時の挨拶の構成 】
① 閉会まで共に時間を過ごしてくれたことへのお礼
② 閉会(お開き)のお知らせ
③ 今後のお付き合いのお願い
⑤ 帰路への気遣い
≪ 例文 ≫
① 皆さま、本日は誠にありがとうございました。
② 大変名残惜しく思いますが、どなた様も明日のご予定があるかと存じますので、このあたりでお開きとさせていただきます。長い間お引き留めいたしまして申し訳ございませんでした。
③ 今後とも一層のご厚誼、ご支援を宜しくお願い申し上げます。
④ 足元が悪くなってまいりましたので、どなた様もお気をつけてお帰り下さい。本日は誠にありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。喪主の挨拶は、このようにいくつかの重要な場面で行われます。決して上手に話そうとするのではなく「ゆっくり、わかりやすく」伝えることを心がければ必ず弔問客の心に届きます。
特に「葬儀・告別式の案内」などは日時を正確に伝える必要もありますので、心配ならばメモを用意して読み上げてもよいのです。とはいえ悲しみの中での挨拶は、どうしても感情がこみあげてきて言葉につまることもあるかもしれません。
そんな時も「ゆっくり、わかりやすく」を心がけて、心を落ち着けつつ挨拶に臨んでください。姿勢もなるべくまっすぐ立つようにすれば声も通りやすくなります。冒頭でも述べましたが、喪主の仕事は数多くあるものの、挨拶も大切な仕事のひとつです。
「喪主の挨拶」の構成をたどりつつ、あなたらしい挨拶を考え、皆さんに感謝の気持ちを伝えてください。
まとめ
喪主の挨拶の基本マナーとは
・通夜は駆けつけてくれたことへの感謝を伝える
・通夜振る舞いの挨拶は、始まりと終りの2回行う
・葬儀・告別式の挨拶は、エピソードも入れる
・初七日法要の挨拶は「今後の決意」も盛り込む
・精進落としの挨拶はお付き合いいただいた感謝を伝える