密葬と家族葬、どちらもごく身内で行う葬儀スタイルですが、どのように違うのか分かりますか?
人生の中には様々なイベントがありますが、そのどれもが多様化してきていますね。実は葬儀もそのひとつです。最近では従来の「通夜と告別式」を執り行うスタイルだけではなく、宗教や形式などに捉われない葬儀のスタイルを希望する人も増え始めています。
そのような中でも注目されているのが、家族やごく親しい人々で葬儀を執り行う「家族葬」です。街の斎場でも宣伝されていることがあるので、言葉だけでもご存知の方がいらっしゃることでしょう。
しかし日本には以前から「密葬」と呼ばれるスタイルもあります。密葬もごく身内のみで執り行われる葬儀です。それではいったい密葬と家族葬は何が違うのでしょうか?
今回は満足できる葬儀スタイルを選びたい方々へ向け、密葬と家族葬の違いを説明します。
密葬と家族葬の違い☆
決定前に知るべき7つの基本
密葬と家族葬の「決定的な違い」
簡単に説明すると、このようになります。
【 密葬とは 】
葬儀を執り行うこと自体を周囲に知らせることなく、ごく内輪で通夜・葬儀・火葬までを行う(告別式は行わない)。
・ なお、密葬から1か月後くらいを目処に「本葬」を行います。
【 家族葬とは 】
葬儀社が主導する「形式的な葬儀」ではなく、家族を中心とした故人とごく親しい人々のみで「故人を見送る」葬儀のスタイル。
・ 「故人と深いゆかりのある人々とのお別れ」に重きを置いて執り行われる。
つまり、密葬は本葬が執り行われて初めて「完結」するのですが、家族葬はそれだけで「完結」するものなのです。以下の項目で、それぞれについて詳しくご説明します。
密葬の本来の意味とは
そもそも密葬は、社葬や団体葬などの大規模な「本葬」の前に行う葬儀のことを指していました。
故人が社会的に地位のある方や著名人では、葬儀には参列者がたくさん訪れることになりますが、その規模が大きければ大きいほど葬儀の準備に時間がかかります。
【 密葬の本来の意味 】
そのため前もってごく内輪で弔いを行う形式が生まれました。これが密葬です。つまり後ほど、みんなで故人を偲ぶ「本葬」を執り行うことが前提にあるのです。
最近では本葬の代わりに、ホテルやレストランで宗教的儀式に捉われることのない「偲ぶ会」や「お別れの会」を開くケースが増えています。
【 最近の密葬スタイル 】
■ また、本来密葬は通夜・葬儀・火葬までをごく内輪で行うものですが「通夜は密葬、葬儀と告別式は一般的なもので」というスタイルも広がりつつあります。
このスタイルでは、訃報の通知は「告別式の日程」のみとなり、通夜は内輪で過ごすことができるというメリットがあります。
家族葬の目的とは
一方、家族葬は「後日、本葬を行う」という考え方は基本的になく、家族やごく親しい人のみで葬儀のすべてを執り行います。
【 現在の「家族葬」の定義 】
■ そういった意味では特に葬儀のスタイルに定義があるわけではありません。
・ 一般的な通夜や葬儀を執り行う場合もありますし、これらを省いて最低限の火葬だけをしてもらう「直葬」なども家族葬に含まれてきます。
しかし、当日の参列者に含まれていなかった方の心情に配慮して、密葬に対する本葬のように、後日「告別式」や「お別れ会」を執り行うケースもあるようです。
そういった意味では密葬と家族葬の違いは、だんだん曖昧になってきているのかもしれません。
密葬を執り行う時のポイント
【 密葬を執り行う時の注意点 】
■ 密葬はごく内輪で執り行うため、周囲にそのことを伝えません。
・ もし伝わってしまった場合は弔問客の対応に手間がかかることになり、密葬の意味がなくなってしまいます。
ただし火葬まで済ませてしまうため、本葬やお別れの会の参列者は故人との「対面でのお別れ」ができなくなります。そのため、故人と親しい関係の方には、密葬を予定している旨を必ず伝え、理解を得ておく必要もあります。
■ 密葬を済ませた後、本葬やお別れの会のお知らせを送ります。
家族葬を執り行う時のポイント
【 家族葬を執り行う 】
■ 一般的に、10名ほどの小規模な家族葬です。
・ そのため家族葬の参列者は2親等くらいまで、30名ほどの大規模な家族葬の参列者は家族・親族など3親等の方に加えて「故人と親しかった友人・知人」という構成になります。
故人の生前の人間関係をよく考えて、家族葬のお知らせをする範囲を決めなければなりません。なお、家族葬のお知らせは身内が基本のため、電話などでも失礼にはあたりません。
【 家族葬の後 】
■ 後日、故人の関係者に「家族葬を執り行ったこと」をお知らせします。
・ ここには「故人の希望により家族葬を執り行った」など、はっきりと「家族葬というスタイルにした説明」を明記しておく必要があります。
また、香典や供物は一切辞退することや、会葬の予定はないことも記載します。
密葬・家族葬での「香典」について
密葬も家族葬も、近親者のみを基本とするので、香典は辞退するのが一般的です。しかし家族や親族以外の方が参列する場合は、香典を持参する場合がありますので、その場合は丁重にお断りするのが一般的です。
【 密葬・家族葬での「香典」 】
■ そのためにも前もって「香典や供物は一切辞退する」旨をお知らせしておくと良いです。ただし、返礼品や会葬の礼状は用意しておきます。
また、訃報を後から知った方が香典を送ってくることもあります。その場合は受け取り、後日お礼状と共に香典返しを送ります。
密葬・家族葬でよくあるトラブル
密葬や家族葬は、家族・親族や故人にゆかりのある人のみで故人とお別れができるため、一見とても理想的に感じられますが、実はとてもトラブルが多いのです。特に、家族葬においては以下のようなトラブルが起こりがちです。
【 密葬・家族葬で見られるトラブル 】
・ 故人の友人・知人が個人的に弔問に訪れるので、個別の対応に追われることになった。
・ 家族葬のつもりだったのに、式の日程を知った方たちが参列したので対応に追われた。
・ 親戚や知人などから「なぜ自分たちに黙って葬儀を執り行ったのか」と苦情が相次いだ。
つまり「故人と最後のお別れがしたかった」方たちが、このような行動を起こすのです。
密葬は遺体とのお別れはできないものの、後に「お別れの会」があるのでまだ「納得してもらう」余地がありますが、全くお別れの機会がない家族葬では、人によっては怒りが収まらないことがあるのも当然かもしれません。
したがって、内輪で葬儀を行いたい場合は、親戚や故人と親しい方には特にきちんと説明をして、理解をしてもらう必要があります。
そして「故人がある程度若く交友関係が広い」「ある程度多くの弔問客が見込まれる」場合は、一般的な葬儀の方が「お互いの心労が少ない」ことを覚えておいてください。
密葬と家族葬のお話はいかがでしたでしょうか。ややシビアなお話になったことに驚かれた方も、いらっしゃるかもしれません。
ただ、ちょっと考えてみてください。もしもあなたの親しい友人が、不幸にして亡くなってしまったけれど、訃報を受けた時には葬儀一切が終わっていて、友人はもうお骨になってしまった…と聞いたら、多くの方はやり場のない悲しみで冷静ではいられなくなるのではないでしょうか。
もちろん、密葬や家族葬には「故人とゆっくりとお別れができる」「余計な段取りが要らない」などのメリットもあります。
しかし、周りの人々の心情にきめ細やかに配慮することは絶対に必要です。どうかそのことをよく考えてから、密葬や家族葬を検討するようにして下さい。
まとめ
家族葬や密葬の葬儀スタイルを決める前の基礎知識
・密葬と家族葬の「決定的な違い」は、密葬には本葬があること
・密葬は「本葬ありき」の葬儀スタイル
・家族葬は家族やごく親しい人々で執り行う「小さな葬儀」
・密葬を済ませた後、本葬やお別れの会のお知らせを
・家族葬なら、「家族葬」というスタイルにした説明を丁寧に
・密葬・家族葬では、前もって「香典や供物は一切辞退する」旨を
・「故人と最後のお別れがしたかった」方たちへの配慮を欠かさず