葬儀や通夜の時に喪主が挨拶している様子を見ると、深い悲しみの中、涙をこらえながら立派にまっとうする姿に感動すると同時により悲しみが増すこともあるものです。
長男が喪主を務めることも多いかと思いますが、そうそう日常的に経験するものでもありませんので、機会をみつけてひととおりのことは頭にいれておくことが肝要ですよね。
実際にその場に臨んだ時には、葬儀社の方などにまずは相談することになると思いますが、一通りの予習の意味を込めて、長男の立場を念頭におきながら喪主の挨拶のポイントを以下の通り紹介します。
喪主の挨拶、
あなたが長男の場合に考えてほしい9つの事
喪主の挨拶の基礎知識
喪主の挨拶は通夜ふるまいの時に行う場合が多いです。しかし全ての参列者が同じ時刻に揃って席につくことはないと思います。参加せずに帰られる方にはお見送りの挨拶が必要ですし、遅れてこられる方もいらっしゃいます。全てを一人で対応することは不可能ですので、事前に遺族で役割分担をしておくのが良いでしょう。
喪主は帰られる方の見送りを優先する場合が多いですが、通夜ふるまいの時に挨拶をした流れで多少飲食を付き合う場面ありますから、この時間も大切にしましょう。
挨拶の基本の流れは次の通りとなります。
1.はじめに、参列者に会葬のお礼をのべ、自分が個人の長男だという事を述べます。
2.故人の享年や死、生前の職業や人となりについて述べます。
3.故人が生前にお世話になったことへのお礼を述べます。
4.結びとして、遺族の覚悟を述べると共に、遺族、親族へのご支援・ご指導のお願いをします。
5.最後に会葬お礼の挨拶で締めくくります。
挨拶の言葉選びの基本
・忌み言葉を知る 葬儀の席では、不吉さを連想させる言葉は「いみことば」と呼ばれ、使用は厳禁です。 他に「重ね重ね」「たびたび」「またまた」「しばしば」などの言葉も、死や不幸がくり返されることを連想させるので使用してはいけません。
・ゆっくり話す 早口にならないように注意します。メモをみながらでも失礼には当たりません。
・挨拶の文章自体は、例文集のようなものがたくさんありますのでそれらを参考に、自分の言葉に置き換えるなどして思いを込め、伝える内容をよく考えましょう。
とはいえ忌み言葉などのタブーもあるためか、ステレオタイプなものになりがちであることは否めません。以下に、参考になりそうな単語をまとめてみましたので必要に応じて置き換えるなどして工夫してみてください。
参列に類する言葉
会葬、出席、参集、お集まり、おいで、お越し、おとむらい、お見送り永眠に類する言葉
最期、大往生、成仏、他界、昇天、亡くなる、息を引き取る、この世を去る、旅立つ、果てる、不帰の客となる、 逝く死後に類する言葉
黄泉の国、草葉の陰、冥土、極楽、浄土悲しみに類する言葉
悲哀、悲嘆、悲痛、悔やむ、胸が裂ける親交に類する言葉
交際、交誼、友好、親睦、親交運命に類する言葉
天命、巡り合わせ、寿命、天寿、定め、運命
家業の後継者として
故人が会社経営者だった場合など、長男が後継者となる場合が多いと思います。葬儀の参列者には会社の従業員や取引先なども多数参列している場合が多いと思いますので、生前の仕事上の苦労話や成功した話などをエピソードを交えて話すのが良いです。
その時、いかにも素晴らしい個人的な能力を発揮したという言い方は避けるようにしましょう。ただの身内自慢のイヤミな物語ととられる可能性があります。
あくまでも会社を支えてくれた社員や取引先の力添えがあった賜物であった、死んだ親父は幸せ者だったというスタンスが大切です。故人を手放しで礼賛するのは他人の挨拶にゆだねましょう。
最後に今後とも故人と変わらぬご支援を賜りたい旨をお願いして締めます。
できるだけ簡潔に
喪主の挨拶が続く間、参列者は黙って聞いていなくてはなりません。飲食を長時間止めてしまうのはあまり良い印象を与えないともいえますので、簡潔明瞭に挨拶をすませるよう心がけて下さい。
挨拶が終わったら参列者たちはめいめい近くの席の人達と、故人の思い出話で盛り上がり始めます。それぞれの席を順番に回りながらお酌をしつつ、故人をしのぶ話に付き合って下さい。
この時に、冒頭のあいさつで話せなかった内容を、ケース・バイ・ケースで話せばよいです。またその場では、感情が高ぶった状態になりやすいので、つい故人が秘密にしておいたことをうっかり話してしまいかねないので注意しましょう。
例えば、取引先の誰それの愚痴をよく言っていたなどのネガティブな情報は出さない方が賢明です。
お見舞のお礼
葬儀・通夜を執り行うということの大きな意味は、故人があの世へと間違いなく往生してもらうように送り出すことが第一ですが、遺族側の立場としてはそれと同時に、参列者へのお礼という大事な役割もあります。
喪主の挨拶にはこの会葬へのお礼という意味も大きなウェイトをしめています。今後の付き合いをスムースにしていくためにもお礼と、これからのご指導、ご厚情を賜りたいというお願いは特に重きを置いて挨拶するようにしましょう。
結婚式の挨拶では何人もの人が挨拶出来ますが、通夜などでは参列者が三々五々集まり帰っていくというスタイルとなっている手前、遺族が複数で入れ替わり挨拶をするということにはなっていません。そのため、喪主の挨拶で全てを網羅する必要があるとも言えます。
急逝した様子
高齢者には、冬の寒い朝に気が付いたら死んでいたというのが良くあります。このようなピンピンコロリは高齢者の憧れの死に方ベスト・ワンで、昔は現代よりはるかに多かったようです。
医学の発達による人工的な延命措置によって、なかなか死ねずに苦しみ続けた挙句、医師の見立て通りの日数で死ぬ、というのははたして本人・家族にとって幸せなのかどうか疑問に感じるところではあります。
とはいうものの故人は家族に見守られ幸せに旅立った、という定型文は必ずといっていいほど挨拶の中に入ってきます。ヤブ医者の治療ミスで苦しみながら死んでいった、などとはあまり言わないものです。
古来からの信仰と仏教的な思想が複雑に絡み合った結果、日本社会では死ぬときに後悔や恨みを残しては大往生できない事になっています。下手をすれば怨霊や祟り神になってしまいますので、残された者が安心出来ないのです。
通夜の謝辞
通夜の席で遺族は、急逝を聞いて駆けつけてくれた人達から沢山の慰めや励ましのお言葉を頂きます。これに対する謝辞も忘れずに言うようにしましょう。
前途のお見舞いのお礼では、参列者が故人の冥福を祈ってくれることへのお礼でしたが、こちらでは残された遺族に対する心遣いへの謝辞という違いがあります。
判りにくくてややこしいかと思いますが、とにかく参列者にはお礼を言う事を欠かさないことが大切です。例文としては以下のような感じになります。
「本日は、ご多用中のところ、多数お参り下さいましてまことにありがとうございました。またさきほどらいから、いろいろお励まし・お慰めを頂きありがとうございました・・・」
その8.通夜ぶるまいへの案内
通夜ぶるまいは、忙しくてゆっくりできない人を除いて出来るだけ参加して頂くようにご案内するのが基本です。会場内はバタバタと多数の人達が出たり入ったりで、そこここで挨拶やらなにやらが行われていますが、ほぼ全員立ち話の状態です。
冬場や天気が悪い時などは見ている方が気になって仕方がありません。しかし通夜ぶるまいを頂くという事に多少遠慮を感じている人もなかにはおられますので、きちんと案内をするようにしましょう。
「別室にて、ささやかではございますが、軽い食事と飲み物の用意を致しておりますので、どうぞ召しあがってお帰りいただきたいと存じます。」こんな感じで結構です。
初七日法要の喪主の挨拶
葬儀が無事に終了したら次には初七日の法要が待っています。このときにも喪主は遺族を代表して挨拶しなければなりません。基本的には葬儀・通夜の挨拶においてと同様のポイントに注意を払って頂ければ結構かと思います。
具体的には、
1.葬儀が無事滞りなく終了したこと
2.葬儀の日以来本日まで皆さまにたくさんのお言葉と励ましを頂いたことへのお礼
3.これからも亡き親の思いを胸に刻む遺族の思いと自分達へのご指導・ご鞭撻を賜りたい旨
4.本日お集まりいただいたことへのお礼
といった内容を過不足無く盛り込んでおくことが大切です。
さて、葬儀などの挨拶、それも喪主の挨拶ともなると人生で一度経験するかしないかといったところでしょう。時間もなく一度に色々な準備をしなければならない中で、精神的にもショックを受けている状態ではなかなかスムースに出来るものではないですよね。
生前から先回りしてその準備をするというのはある意味不謹慎、ととる向きもありますが、挨拶というものはそもそも身内以外の方々へ向けた物でもありますから、ある程度の心構えをする状況になったら、せめて下調べくらいは始めて頂くことをお勧めします。
まとめ
喪主の挨拶、あなたが長男の場合には
・喪主の挨拶の基礎知識
・挨拶の言葉選びの基本
・家業の後継者として
・できるだけ簡潔に
・お見舞のお礼
・急逝した様子
・通夜の謝辞
・通夜ぶるまいへの案内
・初七日法要の喪主の挨拶をしっかり意識しましょう