法事の香典は、故人の霊前に供える金品の事を指し、お通夜やお葬式(葬儀)の際に持参します。本来、法事の香典は仏式にしか使わない(お香をお供えするのは仏式のみ)言葉でしたが、「香典袋」が一般的になり、総称して「香典」と呼ばれるようになっています。
ですから仏式でない法事に参列、マナーに精通されている方の法事に参列される場合は、「不祝儀袋」と呼んだ方が安心です。
今回は、法事の香典である不祝儀袋(香典)を包む時の7つのマナーをお伝えします。法事の香典は、様々な宗教や宗派が関係しています。そのため、少し難しいマナーではありますが、法事の香典のポイントを抑えてお伝えします。
大人としての礼儀、しっかりとした法事の香典マナーで参列して下さい。
法事の香典について
知っておきたい7つのポイント
不祝儀袋の選び方を知っておこう
意外と忘れがちになるのが、不祝儀袋(法事の香典袋)の選び方です。法事の香典はまず宗教によって、選ぶ袋が異なります。
【 宗教によって違う、法事の香典袋の選び方 】
◆仏式の場合…
蓮の花が描かれた物が正式です。水引が印刷された袋は、1万円以下の金額を包む場合に使います。1万円以上包む場合は、黒白か双銀の「結び切り」の水引の袋を選んで下さい。
◆神式の場合…
白無地の袋が正式です。白黒又は双銀・双白の水切りの物を選びます。包む金額による袋の差はありません。
◆キリスト教の場合…
ユリの花や十字架が描かれた袋がキリスト教式用です。水引はありません。但し、突然の訃報で用意できない際は、白無地に双銀の袋でも大丈夫です。
まず訃報を受けたら、お悔やみの言葉を伝えると共に、お通夜・告別式の日時と場所、宗教を確認しておくと安心です。もしも、宗教を聞き忘れた場合は、葬儀会場に確認という方法もあります。
法事の香典では、知らず知らずの内にマナー違反を犯してしまう事もあり得ますから、ご注意下さい。
不祝儀袋・表面の書き方に注意しよう
では次に、法事の香典の不祝儀袋・表面の書き方をチェックしてみます。法事の香典で使う筆は、薄墨(薄墨筆ペンなど)での記載が基本です。
◆仏式の場合…
一般的には「御霊前」や「御香典」と記載します。但し、浄土真宗の場合は、お通夜や葬儀関係なく「御佛(仏)前」と記載するのがマナーです。仏式で宗派が分からない場合は、「御香料」と記載しておくとどの宗派でも通用します。
◆神式の場合…
「御霊前」や「御玉串料」、「御榊料」と記載します。「御玉串料」と記載しておくと、神式の為のお供え、と言う事が相手にも伝わります。
◆キリスト教の場合…
「御花料」が一般的で、宗派を問わず記載出来る書き方です。「御霊前」や「御ミサ料」もOKとされていますが、プロテスタントや福音派で使えない場合もあります。キリスト教の葬儀に参列する際は、「御花料」と覚えておきます。
正しい献辞(表書き上段)が記載出来たら、下段にあなたのお名前、もしくは連名(3名まで)を記載して下さい。
相場の金額を知っておこう
ここでは法事の香典の、一般的な相場の金額を記載します。あなたの年齢や相手との関係性、また地域によっても、法事の香典は変わってきます。参考程度に確認して下さい。
【会社の上司・同僚の場合】
法事の香典は、5000~1万円。40代以上なら1万円~、が一般的です。そのご家族が亡くなられた場合は、3000~5000円。40代以上なら、5000~1万円お包みします。
【親しい友人の場合】
20代の法事の香典は、3000~1万円、30代以上なら1~3万円が相場です。友人のご家族が亡くなられた場合は(相手との関係性により)、3000~1万円までの間でお包みします。
【祖父母の場合】
20代ならば1万円、30代なら1~3万円、40代以上なら3~5万円と頭に入れておきます。
【両親の場合】
法事の香典は、3~10万円までの間の金額をお渡しして下さい。あなたご自身の年齢、喪主との会話で金額を決めていきます。
【兄弟・姉妹の場合】
法事の香典は、20代なら3~5万円、それ以上ならば5万円が相場です。
【おじ・おば/親しい親戚の場合】
1~3万円までの間でお包みします。法事の香典は相手との関係性により、金額を決めていきます。
【知人・隣近所の場合】
法事の香典は3000~5000円、40代以上なら1万円でも構いません。
その他、交流があまりない場合は、周りの方と一緒に包む場合もあります。合計の金額に端数がないよう、また「4・9(死・苦)」がつく数字は避けて包むようにしましょう。
中袋の書き方を確認しておこう
法事の香典の中袋は、毛筆を使うのが正式とされていますが、筆ペンやサインペンでも構いません。黒のインク(薄墨ではない)の物を使って下さい。
宗教に関わらず、中袋(中包み)の法事の香典の書き方は、同じルールです。但し、表面には何も記載しない地域もありますから、その場合は周りの方に確認して記載して下さい。
【 法事の香典:表面 】
一般的に、まず表面に金額を漢数字で記載します。「金参萬円也」と、難しい漢字を使って下さい。
【 法事の香典:裏面 】
あなたの住所と郵便番号、名前を書き入れます。郵便番号は、縦書きならば漢数字、横書きならば算用数字を使います。
【 連名での法事の香典 】
連名でお金を包む場合は、代表者のみの住所と名前を中袋裏面に記載します。そして、ほかの方のお名前を別紙に書き、中袋に入れて下さい。
連名で法事の香典を包む場合には、「香典のお返しはご無用に願います」と一言書き添えておくと、とても親切です。また市販の法事の香典(不祝儀)袋の中には、金額を記入する欄が決まっているものもあります。その場合は、そちらに記載すれば大丈夫です。
お金の入れ方・包み方に注意しよう
まず法事の香典では、新札は使わないのがマナーです。どうしても新札しかない場合は、軽く折り目をつけて包んで下さい。
また汚れたお札やシワだらけのお札も失礼にあたります。ほどよく使用感があるお札を使うようにします。ではお金を包んでいきます。
【 法事の香典の、包み方 】
① 法事の香典のお札の入れ方
全てのお札の向きを揃え、肖像がある方(表面)が中袋裏面にくるように入れて下さい。
半紙や奉書紙を使う場合も同様です。お札の表面が後ろを向くように包みます。中袋や中包みは、糊付けは不要です。
② 法事の香典の中袋の包み方
中袋を包んでいきます。外包みを開き、その中央に中袋を置いて下さい。外包みと中袋の表裏が同じ向きになるように包みます。
③ 法事の香典の外袋の包み方
外包みを、右→左→下→上の順で折っていけば終了です。水引がある場合は、水引を外包みの中央に入れ、完成させて下さい。
お札の向きに厳密なルールはないとされてはいますが、慣例となっている入れ方ですから覚えておいた方が無難です。
法事の香典の渡し方を覚えておこう
法事の香典は、お通夜、又は葬儀のいずれかに持参します。袱紗に包んで持参するのが大人としてのマナーです。弔事の際に使える袱紗の色は、「紺や深緑、グレーや紫など」があります。相応しい色合いの袱紗に入れて持参して下さい。
【 法事の香典の渡し方 】
① 受付に向かう直前に、袱紗を出しておきます。
② それから受付にて一礼し、お悔やみの言葉を述べて下さい。
法事の香典をお渡しする時のお悔やみの言葉は、「このたびはご愁傷さまです。」や「心よりお悔やみ申し上げます。」など手短な言葉で構いません。
③ 法事の香典を手渡しします。
・ 右手の上に袱紗を乗せ、左手で袱紗を開き、中から法事の香典(不祝儀袋)を出します。
袱紗は、受付の上に置き両手でお渡しする、又は袱紗を台の代わりにしお渡しする、どちらのマナーでも大丈夫です。その際、受付の方から見て文字が読めるように、向きを変えてお渡しして下さい。
そして、芳名帳に名前を記載します。夫婦一緒に参列している場合は、お二人共の名前を記載して下さい。もしも代理で記帳する場合は、本来参列するはずだった方のお名前を芳名帳に記載し、その下に「代理(妻の場合は“内”)・ご自身の名前」を小さく記載します。
郵送する場合のマナーを知っておこう
社会人ともなると、どうしても参列出来ない場合もあります。その時に備えて、不法事の香典(祝儀袋)を郵送する際のマナーも知っておくといざと言う時に役立ちます。
■ まず参列出来ない場合は、弔電を打つのがマナーです。
それから別途現金書留で香典を送って下さい。通常と同じように、表面(献辞と名前)、中袋に金額と住所・氏名を書き入れ、現金を入れます。この香典袋を現金書留専用の封筒に入れて下さい。
そして、ご遺族へ向けたお手紙を書き、同封して投函します。短い文章でも構いません。手書きで参列出来ない事へのお詫び、ご遺族へのお悔やみの言葉を記して送りましょう。
もしも会社関係だった場合は、香典、手紙と一緒に名刺を送って下さい。名刺の右上に“弔”の文字を書き入れ、同封されると宜しいでしょう。送り先は、相手のご自宅です。分からない場合は、葬儀社や会場、又は周りの方に確認して送って下さい。
いかがでしたでしょうか。法事の香典(不祝儀)袋の選び方、表面の献辞部分を覚えておけば、それ程焦る事はありません。
例え、ご自身は無宗教者であっても、故人やご遺族は違います。宗教を身近に感じられなくなった近年とは言え、法事の際は必要となってくるマナーですから、しっかりと覚えておくと、大人としてしっかりと故人を偲ぶ気持ちを伝えることができます。
突然のお葬式は大人としての礼儀が試される場でもありますから、知らぬ内にマナー違反を犯さないよう、しっかりと備えておくことが重要です。
また何よりも大切なのは、故人を想う気持ち、ご遺族への配慮です。参列する・出来ないに関わらず、相手を労わる気持ちを忘れないようにしましょう。しっかりとしたマナーで、故人との最後の時間を過ごして下さい。
まとめ
法事の香典について知っておきたい、大人としての基本マナーとは
・不祝儀袋は仏式・神式・キリスト教式で、準備が違う
・それぞれの宗派・宗教によって、不祝儀袋の表書きが違う
・法事の香典は、あなたの年齢や故人との関係、地域性で変わる
・中袋は薄墨で、表面は金額、裏面は自分の住所などを書く
・お金は新札を避け、表面が中袋裏面にくるように入れる
・法事の香典は受付時の挨拶で、袱紗に不祝儀袋を置いて渡す
・法事の香典を郵送なら、まず弔電を打ってから別途現金書留