改めて洋食のマナーというと、少し堅苦しいとか敷居が高いという印象を持ってしまう方も少なくないですよね。外食する際、普段はテーブルマナーを気にするシチュエーションよりは気楽な雰囲気で選びますが、逆に、ここぞという時には、特別感が演出できる格式の高さなどでお店・料理を選ぶことでしょう。
しかし、いざお店に着くと素敵なお店の雰囲気や豪華なお料理で、気持ちは盛り上がりますが、普段食べ慣れていない洋食のマナーを知らないことに気付いた途端、折角のお味も分からない位緊張してしまった!なんて経験をお持ちの方も多いでしょう。
そこで今回は、難しそうで案外簡単な洋食マナー、ここさえ押さえておけば恥をかかないポイントについてお伝えします。
ナイフやフォークは『外側』から順番に
洋食のマナーの中で、まず気になるのがお食事の仕方。テーブル上にズラーッと並んだアイテムの使い方ですよね。
洋食のマナーで代表的なのは、ナイフやフォークは『外側』から順番に使うこと。お店のスタッフが置いてくれた順番で手にすれば良いのですから、そんなに難しくはありません。
コース料理の一般的な順番についても普段の気軽なお食事ではあまり意識しないところですので、わかりにくいという方も多いでしょう。
しかし、これについてもスタッフが順番に運んでくれるので、必ずしも覚えておく必要のないことですが、お食事を楽しむためには知っておくと便利です。
これが一般的な順番です。この順番で運ばれてくる料理に合わせ、適切なフォークやナイフが『外側』から順番に置いてあるというわけです。
基礎知識として魚介用のナイフは他とは形が異なることは覚えておくと便利でしょう。
また、会話に花が咲いて取る順番を間違えたという時も、慌てる必要はありません。
万が一、間違えてしまってもスタッフが食べ終えたお皿を下げに来た際にその旨を伝えれば、不足分を届け対応してくれます。
お皿を下げて貰う合図
コース料理はスタッフがゲストごとの食事スピードに合わせて順番に運んでくれますが、ゲストが合図を出してくれなければ、その見極めはなかなか難しいでしょう。
基本として、ナイフやフォークは食事の途中には『八の字』に広げて置き、食べ終わったらナイフの刃は内側に向け、フォークの先は奥に向けた状態で2本揃えて置きます。
もし、お腹いっぱいになったら無理して全て食べる必要はありません。『食べ残し』はマナー違反と思っている方も多いようですが、決してそんなことはありません。
この時、残したものは皿の上でまとめておくとスマートです。それがナイフやフォークの置き方同様「ご馳走様でした」の合図です。
最近では、それらも少しずつ緩くなってきており、厳しい洋食マナーに捉われず気楽に楽しみましょうといったスタイルも増えています。
ただ、せっかく素敵なお店で特別なお食事をするのです、ちょっとかしこまることも楽しむ心の余裕が欲しいところです。
ついうっかりのマナー違反
日本人が洋食でマナー違反しがちなのがスープ。音をたてずに飲むことは厳守事項です。お茶や味噌汁、そばなど音を立てていただく日本人にとっては、これはある意味、異文化の難しいところです。
スープの飲み方は、手前から奥に向かってすくいます。残り少なくなってきてスプーンでは飲みにくく感じたら、左手前を持ち上げ右奥にスープをためてすくいます。因みに、持ち手のついたカップは、そのまま口に運んでも良いとされています。
また、洋食のマナーではフィンガーボールやフォークでライスを食べる際にも失敗しがちです。
フィンガーボールは汚れた指先だけを洗いナプキンで拭きます。
ライスをフォークの背にのせるのはマナー違反、腹の側に乗せて食べます。左手に持っていたフォークを右手に持ち替え、すくって食べることもマナー違反です。
コーヒーや紅茶は立食パーティーではソーサーを左手に持ちカップを右手で持ちますが、席について飲む場合、ソーサーは持ちません。
レモンティーのレモンは入れたままにせず、カップの向こう側か専用の皿に置きます。これは、普段のティータイムでも意識したいところです。
ナプキンの扱い方
ナプキンは着席後すぐに広げ膝にかけましょう。水の入ったグラスの表面の結露水がひざに落ちて衣服にシミがつくのを防いでくれます。
食事の途中で席を立つ際は軽く畳んで椅子の上に置き、食事が済んで店を出る際には畳まずテーブルの上に置くのも洋食のマナーです。
『お酒』のマナー
お酒はお食事の美味しさを引き立てる優れた脇役。洋食のマナーにはお酒に関することもいくつかあります。
食前酒は洋食マナー上、必須アイテムというわけではありません。オーダーするなら、ウイスキーなど強いお酒は避け、カクテルやリキュールなど軽いものにしましょう。
また、知らないワインをオーダーするなら、お店のスタッフにアドバイスをお願いすると安心です。甘口か辛口、フルボトルかハーフボトル、予算などをソムリエに伝えお薦めして貰いましょう。
食事中のワインで一般的に相性が良いのは辛口といいます。赤ワインは肉料理に、白ワインは魚料理になど必ずしもこだわる必要はありません。
フルボトルで注文するとコルク栓を渡されたりグラスに少量注がれてワインが変質していないかのチェック『テイスティング』が求められます。
ソムリエがいるようなお店で質の悪いものなど出される筈はありませんが、これはワインを頂く前の軽い儀式の一つとして、一口味わい頷く位が格好良いでしょう。
同席者のグラスが空になっていても注ぐのはマナー違反。ここは『黙って』軽く手を上げ、空のワイングラスを持ち上げて合図します。
ビールの場合は泡が命です。飲み干してからつぎ足すようにしましょう。
以上、大人なら覚えておきたい、最低限身につけておきたい洋食のマナーをお伝えしましたが、とは言え、普通のことばかりで驚いたという方も多いでしょう。
大事なのは一緒にお食事するお相手を不快にしないためにマナー違反をしない、たったそれだけ。どのような場面でも、マナーというものはそのような周囲への心遣い、それに尽きるといえます。
いつもは身近で気さくな相手と思われているのに、特別なシーンではスマートに振る舞い完璧にリードしてくれる。途端にカッコ良い素敵な大人に見えてしまいますよね。
洋食のマナーを身につけることで、心おきなくお食事が楽しめるというだけではなく、良い意味での人間性の評価を上げる印象操作まで出来る効果もあるのです。