弔事とは、お通夜や葬儀などのお悔やみ事全般を指します。もしもそれらに参列することになったら服装を整え、香典を用意し…など、様々な準備をします。
この時、「そういえばこんな時はどうするのだろう?」「これはマナー違反かな?」と、ふと考えてしまうこともありますよね。
年齢を重ねれば、悲しいことですがその分弔事の機会が増え、自然とマナーが身についてくるものではあります。けれども、若い方や弔事に参列する機会があまりない方は、ひとつひとつの弔事が学びの場になっていくのかもしれません。
それでも非常識にならないよう、基本的なマナーは、前もって押さえておきたいものです。
弔事に関しては様々なマナーがありますが、ここでは「わかりづらい」と思われる項目を絞って解説します。何度か弔事に参列されている方も、おさらいの意味でご一読ください。
弔事のマナーは大丈夫?
参列前におさえたい基礎知識
訃報を受けたら
あなたと亡くなられた方との関係により、対処の方法が変わります。
【 身内や親しい方の訃報を受けたら 】
■ 弔問が可能ならばすぐに駆けつけます。
・ このような緊急の場合には地味な普段着でも失礼にあたりません。
むしろ喪服で弔問してしまうと「用意がよすぎる」と遺族の反感を買ってしまうことがあるので注意が必要です。
場合によっては外出先や勤務先から駆けつけることになるかもしれませんが、その場合はアクセサリーを外し、長い髪はまとめ、メイクを控えめにするなどの配慮をします。
■ また、香典もこの場合は不要です。
・ 遺族に会ったらお悔やみの言葉を述べ、死因や亡くなった状況などのデリケートな話題は口にしないように気をつけます。
【 一般的なつきあいの友人・知人の訃報を受けたら 】
・ 通夜や葬儀の時間と場所、喪家(葬儀をあげる家)の宗教などを確認し、それに沿った準備をします。
一般的なつきあいの方が亡くなられた場合は、通夜と葬儀のうち都合のつく方に参列します。両方に参列してももちろん構いませんが、香典はどちらか一方の日に持参するようにします。
【 職場関係の方の訃報を受けたら 】
・ もし亡くなられた方が会社の上司や同僚の場合は、手伝えることがないか上司の指示を仰ぎます。
ただし故人の役職によっては役員会が必要になる場合がありますので、その場合は上司や担当者の指示に従うようにします。取引先の方が亡くなられた場合も、上司の指示に従い対応してください。
香典の相場と不祝儀袋にまつわるあれこれ
「香典」とは通夜や葬儀などの弔事において、故人の霊前に供える金品のことを指します。そもそもは線香や抹香、香木を供えていましたが、それが現金に置き換わったため「香」の字が用いられています。
【 基本の香典マナー 】
■ 香典は不祝儀袋に入れ、通夜や葬儀の際に遺族側に渡します。
(香典の金額)
・ 両親なら5万~10万円
・ 兄弟姉妹なら5万円
・ その他の親族が1万円
・ そして親族以外は5千円
が相場となっています。
新札は使わないほうが良いとされますが、もし新札しか手元になければ縦半分に折り目をつけてから、不祝儀袋に入れます。
ところで、香典の表書きはは喪家の宗教によって異なることをご存知でしょうか。前もって宗教を確認できればそれに則った表書きとし、確認できなければ「御霊前」とします。
■ 「御霊前」はどの宗教にも使うことができる表書きなので、覚えておくと便利です。
具体的な表書きと不祝儀袋の形式は、以下の通りになります。
○仏式
・不祝儀袋の水引は黒白、または双銀の結び切りとする(水引が印刷された不祝儀袋でも構いません)。袋に蓮の花の模様が入っているものも使うことができる。
・のしは不要(のしは慶事の贈答に使うものです)
・表書きは「御霊前」「御香料」「御香典」のいずれか。ただし宗派が浄土真宗の場合は「御霊前」か「御仏前」を。
・水引の下の中央に、贈り主の氏名を記す。
○神式
・仏式同様の水引とし、のしも不要だが袋は白無地とする。
・表書きは「御霊前」「御神前」「御榊料」「御玉串料」とする。
・水引の下の中央に、贈り主の氏名を記す。
○キリスト教式
・不祝儀袋に水引やのしは不要。白無地の袋か、十字架や百合の花が印刷された不祝儀袋を用いる。
・表書きは「御霊前」「御花料」とする。
・仏式・神式同様、袋の中央から下に贈り主の氏名を記す。
なお、弔事の場合は表書きを薄墨で書くのがマナーです。文具店などに薄墨の筆ペンがあるのでそれを利用してください。
通夜や葬儀での拝礼について
拝礼は宗教によって作法があります。弔事においてはだいたいの流れを把握しておき、会場では他の参列者の作法にならうようにすれば、慌てることなく拝礼でききます。
○仏式(焼香→ここでは「立礼」の作法をご説明します)
①遺族と僧侶に一礼をし、祭壇の前に立つ。
②遺影に向かって一礼する。
③右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまんで眉間の高さに持ち上げる。
④抹香を香炉の中に静かに落とす。この動作を1~3回行う(宗派によって回数は異なります)
⑤遺影に向かって合掌し、故人の冥福を祈る。
⑥数歩下がって遺族と僧侶に一礼してから、席に戻る。
神式では、仏式の焼香にあたるものが玉串奉奠(たまぐしほうてん)です。玉串とは榊の枝に「四手」と呼ばれる紙片がついたもので、これを祭壇に捧げて祈ります。
○神式(玉串奉奠)
①祭壇の前に立って、遺族と神官に一礼する。
②神官から玉串を根元が右側に来るようにして受け取る。玉串の根元を右手で上から持ち、左手は葉先を支えるように下から持つ。
③玉串案(台)の前に進み、玉串を下げないように深く一礼する。
④玉串を時計回りに90度回転させる。左手を玉串の根元まで下ろして、右手で葉先を支えるように持ち変える。
⑤さらに時計回りに90度回転させる。
⑥もう一度時計回りに90度回転させて、玉串の根元を祭壇に向け、ゆっくりと玉串案に供える。
⑦祭壇に二礼し、しのび手(手のひらが合う寸前で拍手を止め、音をたてないようにする作法)で二回拍手し、最後に一礼する。
⑧数歩下がって遺族と神官に一礼してから、席に戻る。
キリスト教式における献花も、仏式の焼香にあたるものです。カトリックでもプロテスタントでも献花がありますが、実はこれは日本のみの習慣です。
○キリスト教式(献花)
①花を両手で受け取り、左手で茎を持ち、右手で花の部分を支えるように下から手を添えて持つ。
②祭壇の前に進んで、遺族に一礼する。
③花を時計回りに90度回転させて、花の根元が祭壇に向くようにする。
④献花台に花を両手で静かに捧げる。
⑤祭壇に向かって一礼する。
⑥数歩下がって遺族に一礼してから、席に戻る。
いかがでしたでしょうか。ここでは弔事のマナーを3項目に絞ってお伝えしました。服装などに関しても細かいマナーがありますが、そのお話はまたの機会にいたします。
なお、通夜に参列する際は「通夜ぶるまい」に招かれたらなるべく参加します、通夜ぶるまいには参列者に対するお礼の意味と、故人を供養する意味が込められているので、ぜひその思いを受け取ってください。
また、葬儀に参列する際は特別な事情がない限りは告別式まで参列するのが一般的であり、告別式は出棺まで見送るのがマナーとなっていることも、併せて覚えておくと安心です。
参列前にこれらの弔事のマナーを少しでもおさえておけば、その分慌てることなく弔事に参列することができます。
もちろんすべてを頭に入れることは大変ですし、特に拝礼の作法はその場にならないとイメージがしにくいものです。しかし「この時はこうする」という流れだけでも理解していれば、相当心持ちが違ってくるはずです。
縁起が悪いと思わず、どうぞ頭の片隅に留めておいてください。
まとめ
弔事マナーの基礎知識
・訃報を受けたら親しい場合は、駆けつける
・一般的なお付き合いなら、通夜か葬儀どちらかで大丈夫
・会社関係のお付き合いなら、上司に指示を仰ぐ
・香典の相場は関係性によって異なる
・香典の御札は、新札は避ける
・相手の宗教が分からないなら、表書きは「ご霊前」とする
・通夜や葬儀での拝礼は、宗教・宗派によって作法が異なる