葬儀・告別式の締め括りで行われるのが喪主(あるいは親族代表)の御挨拶です。御挨拶では、遺族を代表して、葬儀に参列頂いた皆さまへ感謝の気持ちをお伝えすることになります。
挨拶に関しては、特に決まりはありませんが、少なくとも「葬儀に参列頂いたことへの御礼」と「生前の故人に対する厚誼への御礼」を、話す内容に織り交ぜることが必要です。
しかしながら、喪主という立場では、 深い悲しみのなかで気持ちを組み立ててあいさつの内容を考えるというのは難しいものです。このような時に、いざという時に役立つような喪主挨拶の文例があると助かりますね。
今回は、喪主挨拶の文例の中でも、基本的なものをご紹介します。
喪主挨拶の数ある文例に共通する
7つの必須事項
構成文を考えましょう
突然やってくる葬儀は、事前に挨拶文を用意しておくことは難しいものです。そこで、少ない時間でも考えられるよう以下の挨拶文の4つの構成について理解しておいて下さい。
4つの構成とは、「はじめの言葉」「故人が亡くなるまでの経過」「故人の思い出と残された家族の決意」「結びの言葉」です。
はじめの言葉で、今から挨拶を述べるという事と、会葬者へ参列のお礼を述べます。
そして、個人の亡くなるまでの経過や思い出を話します。最後に、故人に代わり、生前に親しくお付き合いを頂いた感謝を伝え締めくくります。
結びの言葉に、残された遺族の事についても触れ、「これからも変わらぬお付き合いの程よろしくお願い致します。」と一言あいさつに入れたほうが丁寧です。では、具体的な例をあげてご説明します。
4つの構成に基づいた文例①
本日はご多忙のところ、遠路ご会葬頂き、厚く御礼申し上げます。(はじめの言葉)
父は昨年の夏に病に倒れ、4月21日午前5時、家族の見守るなか、静かに旅立ちました。(故人が亡くなるまでの経過)
父は、家族を大切にする人でした。僕は中学2年生の時、担任の先生が嫌で不登校になりました。先生が自宅に訪ねてきた時に、父は精一杯息子に向き合ったのかと怒鳴ってくれました。今では、僕にも息子がいます。父の教えを無駄にしないように、家族をしっかり守って生きていきます。(故人の思い出と残された家族の決意)
突然のことにも関わらず、本日は、このようにたくさんの方にお見送りいただけましたこと、あらためてお礼申し上げます。本日は、誠にありがとうございました。(結びの言葉)
4つの構成に基づいた文例②
皆様には、大変ご多忙中にもかかわりませず、亡き父の葬儀に、ご参列下さいまして誠にありがとうございました。喪主として一言ご挨拶を申し上げます。(はじめの言葉)
父は、○○商業を卒業後東京に出てデッチ奉公の後、祖父が創立した現在の青山株式会社を引き継ぎまして、以来、幾度の変転の後今日に至っております。(故人が亡くなるまでの経過)
七十五年悔いない生涯をおくって、故人も満足し、かつ感謝の念を持ってあの世に旅立ったことと存じます。今後は家族心を合わせて父の意志を受け継ぎ、社業発展のために身を捧げる覚悟でございます。(故人の思い出と残された家族の決意)
亡き父同様、ご厚誼のほど切にお願い申し上げまして、お礼の言葉に代えさせて頂きます。(結びの言葉)
4つの構成に基づいた文例③
本日は、お忙しところ、告別式にご参列下さり、最後までお見送り下さいましてありがとうございました。(はじめの言葉)
二人の子もやっと私共の手を離れ、妻もこれからの生活を楽しみにしていた矢先に、ガン末期と聞かされた時には、大変ショックで、しばらくは仕事も手につきませんでした。しかし、先生や看護婦さんの懸命のご介護で、やすらかなうちに静かに息を引き取ることが出来ました。(故人が亡くなるまでの経過)
これからは残る二人の子供と一緒に生活してまいりますが、何分男手一つでは、何かと不行き届きも多いことと思いますが、どうか、これかまで同様のお付き合いを頂きますようお願い致します。(故人の思い出と残された家族の決意)
皆様本日はどうもありがとうございました。(結びの言葉)
基本構成に生前のお礼を付け加えましょう①
本日はお忙しい中、またお休みにもかかわらず、かくも多数の方々にご会葬たまわり、誠にありがとうございました。(はじめの言葉)
また会社の皆様方からは心のこもったお別れの挨拶を賜り、故人もさぞかし喜んでいると存じます。生前中のご好誼に厚く御礼申し上げます。(生前のお礼)
父は、一昨日脳溢血で突然倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。まだ六十才の元気だった父がよもや亡くなろうとは全く思ってもいませんでした。(故人が亡くなるまでの経過)
今は、ただただ、一生懸命頑張っていかねばと思うばかりでございます。(故残された家族の決意)
まだ若輩でありますので、これまでにも増してご指導とご鞭撻を賜りますよう、ここに切にお願い申し上げご挨拶と致します。
本日はどうもありがとうございました。(結びの言葉)
基本構成に生前のお礼を付け加えましょう②
「 本日はお忙しいところ、父の葬儀にわざわざ御会葬くださいまして、誠にありがとうございました。(はじめの言葉)
またご鄭重なご弔意ならびにご香志を賜りまして、厚く御礼申し上げます。(生前のお礼)
明治生まれの父は、家督をゆずりまして以来二十年、悠々自適のうちにすごしておりましたが、昨日眠るがごとく八十八才の生涯を閉じました。(故人が亡くなるまでの経過)
若い時から苦労ばかりの生涯ではありましたが、まさに幸せな大往生ともいえる最後であったことは、子として何よりの慰めでございました。これからは残されたもので、力を会わせて父の意志を受け継いでゆきたいと思います。(故人の思い出と残された家族の決意)
これまで同様のご指導とご鞭撻をお願い致しまして、お礼のごあいさつと致します。(結びの言葉)」
故人が亡くなるまでの経過を省き、個人への思いだけを話す文例
「本日はご多用のところ、皆様方には亡き妻のために、わざわざご会葬頂きまして、誠にありがとうございました。(はじめの言葉)
皆様方のあたたかいお心に見送られて、妻もきっと喜んで浄土におもむいたことと存じます。妻は行年七十三歳。これといった趣味もなく、ただ黙々と働いている姿を思いだしますと、もっと好きなことをさせてやっていたらと、今更ながら後悔の念が沸き上がってまいります。(個人の思い出と残された家族の決意)
今後は、とりあえず、よそ様にご迷惑のかからぬよう、妻の位牌を守ってこの家で生活するつもりでございます。どうぞ、これからも変わらぬお付き合いのほどをよろしくお願い致します。どうも本日はありがとうございました。(結びの言葉)」
いかがでしたでしょうか。
通夜や葬儀で挨拶といっても、 初めて喪主を務める場合などは 話す内容すら分からなくて当然です。 故人に恥じることがない挨拶をしたいとは思っても、なかなか思いつかないことでしょう。
ですが、上手に話そうとしたり、 立派な表現を使おうとする必要もありません。話し方は、4つの構成をふまえて、2~3分程度にまとめるだけ、と思えば、気持ちも楽になるでしょう。
事前に要点だけでも紙に書いておき、 本番では紙を見ながらあいさつしたとしても、全く問題はありません。もしも、例文を使わず自身の言葉で伝えたいと思う方は、 ぜひありのままの想いを伝えてください。
大切なのは、 感謝の気持ちを込めてあいさつすることです。
まとめ
喪主挨拶の数ある文例に共通する7つの必須事項
・構成文を考えましょう
・4つの構成に基づいた文例①
・4つの構成に基づいた文例②
・4つの構成に基づいた文例③
・基本構成に生前のお礼を付け加えましょう①
・基本構成に生前のお礼を付け加えましょう②
・故人が亡くなるまでの経過を省き、個人への思いだけを話す文例